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脂質異常症 dyslipidemia

脂質異常について

脂質とは

血中の脂質は主に中性脂肪であるトリグリセリド(TG)、遊離脂肪酸、遊離型コレステロール、コレステロールエステル、リン脂質が存在します。

TGとコレステロールはリポ蛋白という形で粒子となり、血管の中でからだ中に輸送されます。リポタンパク質の核となる内部には、水に溶けないトリグリセリドとコレステロールに脂肪酸が結合したコレステロールエステルが存在し、その外側は水に可溶なアポリポタンパク質と呼ばれる蛋白質、リン脂質、および遊離型コレステロールで構成された粒になっています。

リポ蛋白はその脂質の構成割合の違い、比重の軽さによってわけられます。

カイロミクロン(CM):
TGが80-90%です。食事からの脂質が小腸で吸収されTGになり、CMはリンパ管・胸管から大循環に入り、筋肉や脂肪組織 のリポ蛋白リパーゼ(LPL)によりTGが加水分解され、組織に遊離脂肪酸とグリセロールを供給。TGの大部分がLPLで加水分解された後、カイロミクロンレムナントとして肝臓に取り込まれます。
超低比重リポ蛋白(VLDL):
TGが約 55%、コレステロール20%の割合の粒子で、肝臓で合成されます。アポタンパク質B-100(アポB)を含みTGおよびコレステロールを末梢組織に輸送します。VLDLは、血漿中の遊離脂肪酸(FFA)およびカイロミクロンレムナントに由来する過剰なTGを肝臓から搬出するための手段です。VLDLの合成は肝臓内FFAの増加に伴って増加し、高脂肪食摂取時や、肥満やコントロール不良な糖尿病で過剰な脂肪組織がFFAを循環血液中に直接放出するときなどに生じます。
中間比重 リポ蛋白(IDL):
TGの割合が減り約 40%、コレステロールが 約 35%。LPL-アポ蛋白C-ⅡによってVLDLおよびカイロミクロンを加水分解する過程で作られます。肝リパーゼによってアポB-を保持したままLDLへと代謝されます。
低比重リポ蛋白(LDL):
アポ蛋白Eの存在下に肝性TGリパーゼによる異化を受けて高濃度のコレステロールとなり、肝臓から全身の臓器にあるLDL受容体に取り込まれます。
高比重 リポ蛋白(HDL):
肝臓や小腸で合成され、半数近くがタンパク質で、少ないコレステロールが含まれます。体内のコレステロールを肝臓に戻す役割を果たしています。

脂質異常症とは

脂質異常症とは、リポ蛋白の代謝障害の総称であり、主に3つのタイプ、高LDL(悪玉)コレステロール血症、低HDL(善玉)コレステロール血症、カイロミクロンやVLDLなどが増加した高中性脂肪(TG)血症があります。総コレステロール(TC)とは、TC=HDL + LDL + 20%TGで構成されています。

脂質異常診断基準は高LDLコレステロール血症140㎎/dL以上、境界型高LDLコレステロール血症120~139㎎/dL、低HDLコレステロール血症40㎎/dL未満、高中性脂肪血症150㎎/dL以上(空腹時)・175㎎/dL以上(随時)、高non-HDLコレステロール血症170㎎/dL以上、境界型高non-HDLコレステロール血症150~169㎎/dLです。(non-HDL-C=総コレステロール ー HDL-コレステロール)

たとえ空腹時の中性脂肪の値が低くても、食後の中性脂肪値が高い場合には、小型化LDLコレステロール(超悪玉コレステロール)が増え、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まるということが分かり、非空腹時の中性脂肪が175mg/dL以上も脂質異常症のあらたに診断基準に入っています。

動脈硬化を惹起するリポ蛋白

動脈硬化が進めば、血管の弾力性が失われるだけでなく、蓄積物からプラークを発生させ、血管内をさらに狭窄化していきます。これが破裂すると血栓ができて、血管を閉塞させ、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など重篤な合併症を引き起こします。心臓や脳だけでなく腎機能の低下も招きます。

脂質異常症のうち、動脈硬化を惹起するリポ蛋白は、酸化LDL、カイロミクロンレムナントやVLDLレムナント,超悪玉コレステロールと言われるsmall dense LDLなどがあります。また末梢から余剰のコレステロールを引き抜くことで抗動脈硬化作用をもつHDLが低下した低HDLコレステロールのみならず高HDLコレステロール血症でも動脈硬化が惹起されることがあります。

虚血性心疾患の危険因子は一般に高LDLコレステロール血症でありますが、small dense LDLは通常のLDLに比べ中性脂肪がリッチでコレステロール含量は少なく,小さくて密度は 重く、LDL受容体への結合能が低下し、長時間血液中にとどまります。そして血管壁に侵入しやすく,酸化変性をきたしやすいため動脈硬化を起こしやすいことがわかっています。small dense LDLは中性脂肪が高い後述する家族性複合型高脂血症、内臓脂肪蓄積に起因するメタボリック シンドローム、耐糖能異常に伴う高トリグリセリド血症等 で認められます。正脂血症例でも耐糖能異常があればsmall dense LDLが認められることがあります。small dense LDLを減少させるには、耐糖能異常や高TG血症、内臓脂肪の蓄積を改善する必要があります。

また、non-HDLコレステロール値は、HDLコレステロール以外の全てのコレステロール値を反映しており、中性脂肪を含んだ動脈硬化の原因であるカイロミクロンレムナントやVLDLレムナント、small dense LDLのいずれが増加した状態であっても、non-HDL コレステロール値として食事の影響を受けずにその上昇が推測できます。

脂質異常症の原因

脂質異常症の発症の原因は大きくは原発性と続発性に分けられます。

原発性については、血清脂質やリポ蛋白の代謝系に内在する異常(多くは、遺伝子異常)から発症します。

続発性については、不摂生なライフスタイル(過食、運動不足、多量の飲酒、喫煙等)をはじめ、高コレステロール血症の原因(糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、先端巨大症、褐色細胞腫、慢性腎臓病)、高中性脂肪血症の原因では(飲酒、肥満、糖尿病、尿毒症、クッシング症候群、SLE、薬剤性(利尿薬、β遮断薬、コルチコステロイド、エストロゲンなど)があります。

主な原発性脂質異常症

家族性高コレステロール血症(FH)

ヘテロ接合体(一方の親からLDL受容体やその働きに関わる異常遺伝子を受け継いでいる)は 約500人に1人の頻度。ホモ接合体(両親から異常遺伝子を受け継いでる) 100万人に1人の頻度です。

診断基準

①未治療時のLDLーC値180mg/dL以上、②腱黄色腫(手背,肘,腱等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫、③FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴2親等以内の3つの条件うち2つ以上当てはまる場合はFHと診断します。遺伝学的検査についても実施できる施設が限られますが保険の適応となります。若年から虚血性心疾患のリスクが高いために、早期に治療開始することが重要です。

家族性複合型高脂血症

家族性複合型高脂血症は、頻度は約1/100人。最も頻度の多い遺伝的な高脂血症です。遺伝形式は単一遺伝子異常に基づくものではなく多因子疾患であることが示唆されています。リポ蛋白像 (Apo-B/LDL-C>1.0あるいはsmall dense LDL)を基本に診断します。肥満は必ずしも伴いません。

ア ポB/LDL-C比の上昇は,LDLの小型化と動脈硬化リスクを意味します。 脂質異常症のWHO分類IIb型(LDLとVLDL が増加)の高脂血症を基盤としますが、食事などの影響でIIa型(LDLが増加)やIV型(VLDL が増加)にも変動します。従ってLDLとTG上昇や、LDLのみの上昇もあります。家族性高コレステロール血症や糖尿病など二次性高脂血症を除外します。若年性冠動脈疾患の発症のリスクが高いです。

家族性Ⅳ型高脂血症

肝臓で合成される超低比重リボ蛋白(VLDL)の上昇が原因となり、遺伝性の高中性脂肪(トリグリセリド)血症をきたします。頻度は一般人口の1~数%と多いです。中性脂肪TGは200-500㎎/dl程度で第1度近親者にも高TG血症を認め、コレステロールは一般に正常です。肥満,高インスリン血症を伴い 、多くは成人発症です。第一度近親者にⅣ型(VLDL上昇)が存在し、他の表現型が存在しません。

高中性脂肪血症単独では動脈硬化性疾患のリスクが高くないと考えられてきましたが、Ⅳ型高脂血症患者の血液から得られたVLDLは酸化LDLと同様にマクロファージの泡沫化促進作用を有するや、VLDL粒子が大型化し,善玉HDLコレステロールの低下が認められるため、冠動脈疾患のリスクがあります。

特発性高トリグリセリド血症

高トリグリセリド血症を認め、家族性IV型高脂血症および家族性複合型高脂血症を除外しうる場合です。

高カイロミクロン血症

①原発性高カイロミクロン血症

空腹時の中性脂肪、血清トリグリセリドTG値1,000mg/dL以上と中性脂肪がとても高いのが特徴です。脂質異常症のWHO分類ではI型(カイロミクロンの増加)及びV型(原因不明でカイロミクロンとVLDLの増加)にみられます。Ⅰ型はLPL経路の異常(遺伝子異常、自己抗体による阻害など)に由来し、かなり稀です。

Ⅴ型はLPL経路の遺伝子異常(APOA5 など)によるCMやVLDLの異化障害に加えて、CMやVLDLの産生増加をきたすような環境要因(アルコール、糖尿病、薬剤など)が加わることによって生じます。カイロミクロン(CM)は,小腸で産生され、食事中のトリグリセリドを全身組織に運ぶリポ蛋白で、何らかの原因でこのCMの代謝が障害され蓄積します。

先の肝臓由来のVLDLだけの蓄積では通常,中性脂肪は1,000 mg/dLを超えず、血中のTG値1,000 mg/dLを超える場合は,CMが蓄積していることが考えられます。症状や所見として繰り返す腹痛や急性膵炎、発疹性黄色腫 、眼の網膜脂血症、肝腫大や 脾腫大、副症状とて呼吸困難感 、神経精神症状(認知症,うつ病,記憶障害)が認められます。

空腹時のTG 1,000 mg/dL 以上は 600 人に 1 人と頻繁には認められませんが、多くの場合は二次的要因によるもので あり,原発性高CM血症 はそのうちのごく一部とされます。

②2次性高カイロミクロン血症
2次性の高CM血症の原因
生活習慣関連要因
アルコール多飲,食事摂取過多,とくに脂肪摂取過多,炭水化物摂取過多(とくにフルクトースなどの単純糖質)、運動不足
生理的・病的状態
妊娠、肥満、メタボ リックシンドローム、神経性食思不振症、耐糖 能異常、糖尿病、内分泌代謝疾患(甲状腺機能低下症、バセドウ病、先端巨大症, Cushing 症候群、Nelson 症候群、糖原病、アミ ロイドーシスなど)、腎疾患(ネフローゼ症候群、蛋白尿、尿毒症、糸球体腎炎など)、肝疾患,自己免疫性疾患(全身性エリテマトーデスなど)、その他リンパ増殖性疾患、 悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など異常蛋白血症、サルコイドーシスなど
薬剤
エストロゲン、クロミフェン、 タモキシフェン、テストステロン、ステロイド、レチノイド、 免疫抑制薬、抗腫瘍薬、降圧薬(サイアザイド,ルー プ利尿薬,非選択性β遮断薬など)、高コレス テロール血症治療薬(レジン)、抗ウイルス薬 、第二世代抗精神病薬(クロザピン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン)、抗うつ薬(ミルタザピン、ベンラファクシン、セルトラリン)、バルブロ酸などの抗てんかん薬など。

原発性高カイロミクロン血症でも2次次性高カイロミクロン血症でも,空腹時トリグリセリドTG値1,000 mg/dL 以上は 急性膵炎のリスクがあるため、早急に受診することが必要で、腹痛や膵炎などの症状に注意してフォローアップする必要があります。

治療
食事療法
脂肪摂取制限が中心です、油としてはCMができない中鎖脂肪酸を使用、炭水化物摂取制限をします。禁酒が望ましいです。
薬物療法
TG降下薬(フィブラート、選択的PPARαモジュレーターなど)が有効な場合もあります。基本的には高CM血症に有効な薬剤はありませんが、VLDL代謝の改善はCM代謝の改善につながり得ます。
二次性高CM血症の治療
高CM血症の原因となる後天的な要素を可能な限り除去します(糖尿病やアルコール多飲、肥満症の治療など)。極端な減量で体重がリバウンドした際には、かえってより重度の高TG血症と急性膵炎を起こす危険があります。糖尿病合併の場合には、糖尿病治療によって高TG血症が軽快するこがあります。糖尿病治療薬としてはピオグリタゾンが他剤より有効なケースなどもあります。

急性膵炎には絶食、低カロリー輸液などの標準的な治療を行います。著しい高中性脂肪血症による急性膵炎の場合には、血漿交換療法も治療の選択肢となる場合があります。

脂質異常症の管理

脂質管理目標は併存する病態・疾患により、リスク別脂質管理目標値を割り出し、虚血性心疾患や脳梗塞の一次予防や二次予防の脂質管理の目標値を決定します。

一次予防はリスク区分別脂質管理目標値をめざして原則生活習慣の改善から始めていきます。 冠動脈疾患またはアテローム血栓性脳梗塞がある場合は二次予防に進みます。 冠動脈疾患や脳梗塞がない場合で慢性腎臓病・糖尿病・末梢動脈疾患ありの場合は高リスクとなります。

上記の疾患がない場合は性別、収縮期血圧、糖代謝異常、血清LDL、血清HDL、喫煙などのポイントにより中リスク、小リスクを決定します。

各リスクの目標

一次予防の目標

低リスクはLDL<160㎎/dl、Non-HDL-C<190mg/dl、TG<150(空腹時)、TG<175(随時)
中リスクはLDL<140㎎/dl、Non-HDL-C<170mg/dl

高リスク(糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患)はLDL<120㎎/dl、Non-HDL<150mg/dl 糖尿病において、PAD、網膜症、腎症、神経障害合併時、または喫煙ありの場合LDL<100㎎/dl 、Non-HDL<130mg/dlと厳しい管理目標となります。

二次予防の目標

LDL-C< 100 mg/dL 未満、Non-HDL-C<130mg/dl

急性冠症候群、家族性高コレステロール血症、糖尿病、冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞を合併する場合にはよりリスクが高く、LDL-C 70 mg/dL未 満、non-HDL-C 100mg/dL 未満を目標とします

脂質異常症の治療

まず喫煙者は禁煙、お酒を飲む方は節酒をします。

食事療法として、コレステロールを多く含む食品(卵黄、レバー、乳製品、魚卵 等)や飽和脂肪酸・果糖などの糖質は控え、塩分の摂取量も気をつけます(1日の食塩摂取量は6g未満が望ましい)。魚、特に青魚に多いEPAやDHAなどn-3系多価不飽和脂肪酸は、中性脂肪を上がりにくくします。大豆製品に多いn-6系多価不飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを減らします。大豆製品や野菜、海藻、きのこ類、こんにゃくには食物繊維が豊富で、コレステロールの小腸での吸収を抑えたり、便として排泄されるのを促します。

食事については肥満をご参照ください。

運動療法を日々の生活習慣に取り入れることで、血中脂質の数値(HDLコレステロールが増加する 等)の改善が期待できるようになります。内容としては、運動強度は中強度で、1日30分以上の有酸素運動(軽度ジョギング、水泳、サイクリング 等)を継続的(できるだけ毎日)に行っていきます。

3~6か月で生活習慣と食事・運動だけでは管理目標の数値にコントロールできないという場合は、併せて薬物療法も用いられます。またどの管理区分でもLDLコレステロール180mg/dL以上が持続している場合には生活習慣の改善とともに薬物療法を考慮しても良いとされています。

管理目標まずは前述のLDLコレステロール値の管理目標を達成してから、non-HDLコレステロールの達成を検討します。高TG血症と 低 HDL-コレステロール血症については一次予防・二次予防で同じくTG150㎎/dL未満(空腹時)、TG<175㎎/dL(随時)、HDL>40㎎/dL以上を目指します。

このうち 中性脂肪については、LDLコレステロールの管理目標を達成してもnon-HDL-C が高い場合は高 TG 血症を伴うことが多く、 その管理が重要となります。

また低 HDL-C については有効な薬剤があまりないこと、HDL-C だけ低く他の脂質異常を伴わない場合は冠動脈疾患のリスクが高くないという報告もあることから、生活習慣、運動、LDL、non HDLコレステロール、TG の管理が重要となります。

高LDLコレステロール血症の薬はスタチン製剤・エゼミチブ等が使われます。家族性高コレステロール血症に対しては強力なスタチンの最大耐用量かつ/または小腸コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブの併用を行い,難治性の場合はレジン,プロブコールやPCSK9阻害薬も用いられます。ホモ接合体FHの場合はLDLアフェレーシスやMTP阻害薬使用も考慮されます。

中性脂肪の数値を下げる薬はフィブラード薬剤、選択的PPARαモジュレーター・3系多価不飽和脂肪酸(EPA,オメガ−3脂肪酸エチル(EPA/DHA製剤)等が使用されます。

脳・心血管疾患をきたす動脈硬化性疾患の発症予防には,脂質異常症,喫煙,高血圧,糖尿病,慢性腎臓病(CKD)、加齢、冠動脈疾患(CAD)の既往、家族歴、非心原性脳梗塞,末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤、腎動脈狭窄、高尿酸血症、睡眠時無呼吸症候群、メタボリックシンドローム等の危険因子の包括的評価が重要です。

動脈硬化進展のリスクを低減させるためにも、健診結果などで脂質(コレステロール、中性脂肪)に関する数値異常の指摘を受けた方は、これといった症状がなくても一度ご相談ください。