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高尿酸血症・メタボ・肥満 hyperuricemia

高尿酸血症、痛風

高尿酸血症とは

尿酸はプリン体と呼ばれる物質(体内で生成されるほか、食物からも摂取できる)が肝臓で分解された後に発生する老廃物です。血液中で尿酸が溶解度を超えている状態を高尿酸血症と言います。血清尿酸値が7.0mg/dLを超えていれば高尿酸血症と診断されます。

成人男性の20〜25%にみられ、核酸代謝関連酵素の遺伝子変異や尿酸トランスポーターの遺伝子変異などの単一遺伝子異常や多遺伝子異常の関与が示唆されています。食事、飲酒などの生活習慣を含む環境要因も高尿酸血症に大きく関与します。

また二次性の高尿酸血症(利尿剤などの薬剤性、悪性腫瘍、甲状腺機能低下、腎不全、脱水、腫瘍融解症候群など)で起こる場合がありますので全身状態や服用中の薬をチェックすることが大事です。

尿酸は水に溶けにくい性質もあり、高尿酸血症の状態が続くと、結晶化します(尿酸塩)。その後、尿酸塩が関節に溜まり、何らかのきかっけで(尿酸塩の)一部が剥がれ落ちると、異物であると認識した血液中の白血球がそれを攻撃することがあります。

こうなると炎症が起き、やがて患部は腫れ上がり、激しい痛みに見舞われるようになります。これを痛風発作(痛風)と呼びます。痛風は発作が出てから24時間をピークに症状は和らいでいき、疼痛は14日以内におさまります。また痛風は足の親指の付け根部分で起きることが多いのも特徴です。

尿路結石や腎機能障害がみられることがあります。また腎障害、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、メタボリック症候群などの合併が多く、腎不全や心血管障害、脳血管障害のリスクが高いのできちんと治療する必要があります。

治療について

治療は、尿酸値を下げる場合と痛風発作が起きている場合で異なります。

痛風発作が起きている場合

炎症や痛み等を抑える薬物療法として、NSAIDs、コルヒチン、グルココルチコイドがあります。腎機能障害や心不全合併、抗凝固薬と抗血小板薬の併用されている方はNSAIDs以外の治療薬を考慮します。グルココルチコイドはPSL20~30㎎/日3~5日間、コルヒチンは痛風発作の前兆期や発作初期に低用量で使用します。

発症後12時間以内に1.0 mg,その 1 時間後に 0.5 mgを 投 与 し, 翌 日 か ら 0.5~ 1.0 mg/日を疼痛の程度で継続し,改善したら中 止します。 発作がみられている間は、尿酸値を下げる薬は使用しません。症状が治まってからにします。すでに高尿酸血症の薬を飲まれている方は継続します。

痛風関節炎または 痛風結節が無い場

まず日頃の生活習慣を見直すことから始めます。アルコールを控えやプリン体、果糖、ショ糖の摂取を控えます、肥満の方は減量します。尿をアルカリ化する食品(海藻類、大豆製品、野菜類 など)や、水分をよくとってください。乳製品の摂取が少ない集団では痛風発作が増加すると言われています。

また運動療法も尿酸値を下げる効果があります。ただ激しい運動は逆に尿酸値を上昇させます。楽である~ややきつい程度の有酸素運動(ジョギング、サイクリング、水泳 等)を1日30分以上、週5日以上が望ましいです。

血清尿酸値8 mg/dl以上では腎障害、尿路結石、糖尿病、虚血性心疾患、メタボリック症候群などの合併症がある場合はアルコールの摂取制限を含めた生活習慣を改善しつつ、薬物療法開始を開始します。9 mg/dl以上では合併症がなくても痛風の発症率が高くなり、 6 mg/dl 以下を目指して薬物療法を考慮しますが、生活習慣病の是正は必要です。

高尿酸血症の病型分類は、尿酸排泄低下型、腎負荷型(尿酸産生過剰型、腎外排泄低下型)と、これらを併せもつ混合型に分類されます。尿酸排出トランスポーターACBG2を介した便中への排泄低下による 高尿酸血症「腎外排泄低下型」が新たに腎負荷型に追加されました。

尿路結石合併例、腎負荷型、中等度以上の腎機能低下例や混合型では尿酸生成抑制薬(フェブキソスタット、トピロキソスタット、アロプリノール)が用いられます。純粋な「排泄低下型」には近位尿細管にあるURAT1トランスポーターを介した尿酸の再吸収経路を阻害する薬(SURI)ドチヌラドなどが選択されますが、その使用には水分を多く摂取し(2L/日)、尿量の確保し、尿アルカリ化薬を適宜併用します。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは

ぽっこりとしたお腹をしている方は内臓脂肪型肥満が疑われます。このような場合、血圧や血液中に含まれる血糖や脂質の数値がやや異常という数値であっても、生活習慣病に罹患している患者様と同等に動脈硬化を促進させやすくします。この状態をメタボリックシンドローム(通称:メタボ)と言います。

内臓脂肪が蓄積している病態では、脂肪組織における慢性炎症、脂肪酸代謝異常、アディポサイトカイン分泌異常が起こっており、これを放置し続ければ、脳血管障害や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)等、重篤な合併症を発症するリスクが非メタボ集団よりも高くなるので、注意が必要です。具体的な診断基準は次の通りです。

必須条件

ウエストサイズ(腹囲)を計測し(足を30㎝ほど開いて立つ)、男性で85cm以上、女性で90cm以上あると判定されると、内蔵脂肪型肥満(ぽっこりお腹が出ている状態)である可能性が高いです。その場合、さらに以下の3つの数値(血糖、脂質、血圧)を確認していきます。

以下の3項目から、2項目以上該当するとなればメタボと判定
血糖 空腹時血糖が110mg/dL以上
脂質 トリグリセリド(中性脂肪)の数値が150mg/dL以上、
またはHDLコレステロールが40mg/dL未満
血糖 収縮期血圧(最高血圧)130mmHg以上、
または拡張期血圧(最低血圧)が85 mmHg以上

減量により高血糖、脂質代謝異常、高血圧などの効果が不十分であれば、個々の因子にたいする治療を追加します。

肥満

肥満・肥満症とは

脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態でBMI(肥満指数)が25以上と判定されると肥満と定義します。肥満症とは医学的に治療(減量)を必要とする病態をいい、疾患として扱います。BMI 25以上の人で、腹部CTで内臓脂肪面積が100 cm2を超えた内臓脂肪型肥満、または肥満に起因ないし関連する健康障害を合併する場合に肥満症と診断します。

BMIの算出方法は以下の通り

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
標準(目標)体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

BMI判定表、日本肥満学会の判定基準(成人)

指標(BMI) 判定
18.5未満 低体重(痩せ型)
18.5〜25未満 普通体重
25〜30未満 肥満(1度)
30〜35未満 肥満(2度)
35〜40未満 肥満(3度)
40以上 肥満(4度)

肥満症に起因しないし関連する健康障害とは

日本肥満学会より肥満症の診断に必要な11の健康障害は減量によりその予防や病態改善が期待できるものが挙げられています。11の健康障害とは以下の通りです。

  • 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常 等)
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 高尿酸血症(痛風)
  • 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
  • 脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作(TIA)
  • 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患、NAFLD)
  • 月経異常、不妊
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)、肥満低換気症候群
  • 運動器疾患:変形性関節症(膝、股関節)、変形性脊椎症、手指の変形性関節症
  • 肥満関連腎臓病

肥満症の診断には含まれていませんが、肥満に関連する8つの健康障害も挙げられています。①悪性腫瘍:大腸がん・食道がん・子宮体がん・膵臓がん・腎臓がん・乳がん・肝臓がん、②胆石症、③静脈血栓症・肺塞栓症、④気管支喘息、⑤皮膚疾患:黒色表皮腫や摩擦疹、⑥男性不妊、⑦胃食道逆流症、⑧精神疾患

2次性肥満の除外

原発性肥満の原因には過食、食物繊維の摂取不足や菓子類、超加工食品の過剰摂取などの食のクオリティの低下、睡眠不足や睡眠の質の低下、生活リズム失調やストレスに伴う過食、夜間食、間食の多さなどの生活習慣が複合的に合わさっています。その中で、原因の明らかな2次性肥満(内分泌性・薬剤性・遺伝性・視床下部性)が肥満の中で10%前後を占めるとされます。

  • 内分泌性肥満:甲状腺機能低下、クッシング症候群・クッシング病、性腺機能低下、成人成長ホルモン分泌不全症、多嚢胞性卵巣症候群など。
  • 薬剤性肥満:非定型精神病治療薬、三環系抗うつ薬、リチウム製剤、グルココルチコイド製剤、インスリン製剤、チアゾリジン誘導体など。
  • 遺伝性肥満:Prader-Willi症候群など原因遺伝子をもつ家系に発症
  • 視床下部性肥満:腫瘍、炎症や外傷による視床下部の器質性破壊、外科手術や脳血管障害による食行動調節中枢の障害により肥満をきたします。
    代表的には、
    Fröhlich症候群(性腺機能低下・尿崩症・視力障害などをきたす)
    empty sella 症候群(下垂体機能異常・視力障害など伴うことあり)
    Kleine-Levin症候群(若年男性に多く、反復性仮眠を伴う)

治療について

下図に示すとおり、まず肥満症では現体重の3%以上、高度肥満では5~10%の減量をめざします。減量目標を達成した場合でも合併する健康障害の状態に合わせて目標を再設定します。食事・運動・行動療法をおこなったうえで減量目標が未達成の場合は肥満治療食の強化や薬物療法、外科療法の導入を考慮します。

肥満症治療指針

肥満症 高度肥満症 BMI≧35
減量目標 現体重の3%以上 現体重の5~10%
肥満症治療食 25 kcal/kg x目標体重/日以下 20-25kcal/kg x目標体重/日以下
  運動療法+行動療法
  経時的な体重・ウェスト周囲長の計測と合併する健康被害の評価
(3か月~6か月を目安に治療効果を評価)
  目標達成⇒目標の再評価・治療の継続
  目標未達成 の場合
    肥満症治療食の強化  肥満症治療食の強化
   薬物療法の導入(健康障害≧2) 薬物療法の導入
    外科治療

食事療法 

一日のエネルギー量の内訳は基本、炭水化物50-65%、蛋白質13-20%、脂肪20-30%です。

フォーミュラ食(糖質・脂質が少なく、ビタミン・ミネラル・蛋白質・微量元素を含んだ調整品)を一日一食だけ交換することで有効な肥満関連病態の改善がみられました。

超低エネルギー食による治療でフォーミュラ食を1日3-4袋使用して減量する場合は入院が必要です。超低エネルギー食では心筋梗塞・脳梗塞発症直後、重症不整脈、重篤な肝・腎障害、妊婦・授乳中、1型糖尿病などの禁忌例があります。

十分な食物繊維の摂取が減量に非常に効果的です。繊維質な食べ物はよく噛むことにもつながり、満腹感が得られやすいです。腸内細菌は食物繊維を餌にして発酵した短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸) を作りだします。短鎖脂肪酸は抗炎症作用、免疫調節作用、抗肥満作用、抗糖尿病作用、抗がん作用、心血管保護作用、肝臓保護作用、神経保護作用などを持つと言われています。

酪酸は消化管に分布する免疫細胞に働きかけ、消化管の炎症と発がんを抑制し、酢酸は脳に食欲を低下させ、脂肪組織や免疫担当細胞に働いて、抗肥満、抗発がん、喘息の緩和などに寄与するとされます。プロピオン酸はGLP-1などの消化管ホルモンの分泌をGPR43を介して促進します。

食物繊維が多い食品をとっていると便の量が増え、大腸を刺激しやすくなり、便通も良くなります。しかしながら不溶性食物繊維ばかりを多くとっていると便通がかえって悪くなることもあります。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を1:2~1:3でぐらいの比で配合し食べた方が、便通をよくし、排便を促す効果があり、硬くてパサパサしているため便秘の悪化が避けられます。

同時に、血糖値を調整することもでき、血中脂質低下の効果も得られます。この様に食物繊維を上手くとって生活習慣病を改善することは非常に重要なことです。 また人工甘味料が肥満リスクを上昇させているという報告があり、積極的な人口甘味料の摂取は推奨されていません。

当院ではフォーミュラ食(マイクロダイエット)を取り扱っています。ご自身が通販でご購入されるよりもかなりお得な価格になります。詳細は当院にお尋ねください。

行動療法

肥満の方は深夜の食事や睡眠不足など生活のリズムが崩れていることがあり、早食い、荒噛みなども肥満につながります。体重増加につながる行動があれば、それに気づき、修正することが必要です。また寝る直前に食べる、ストレスを感じ食べることで解消するなどの行動があれば、まずやめてみます。

食行動質問表は食習慣の問題点をあぶり出す手助けになるでしょう。セルフモニタリング(体重、歩数、夕食時間など)を記録しておくことも減量には有効と言われています。そしてそれを実際に人に見せて評価してもらうことが大事です。

咀嚼法として、一度口に入れたものを30回咀嚼してから飲み込むことを実践してみると良いと思います。いつもどれだけ、早食いで荒噛みであることかを実感できます。食べ物を飲み込むようにして味わうこともなく、一心不乱に食べていると満腹を感じる前にどんどん大量に食べてしまうことになります。

運動療法

有酸素療法を中心に(レジスタンス運動の併用も望ましい)軽度~中強度の運動を1日30分以上、毎日或いは、週150分以上、また座りすぎを減らします。忙しい方は細切れでもよいので今より1日10分(1000歩)歩行を増やすなど、少しずつ運動を増やしていきましょう。

薬物療法

食事・運動・行動療法をしてもなかなか結果がでない場合に検討しますが、保険診療では適応があり、重篤な合併症が起こりやすい方に限られています。

GLP-1作動薬(セマグルチド、ウゴービー®)
  • 適応 肥満症
    ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、 以下に該当する場合に限る。
  • BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
  • BMIが35kg/m2以上

通常、成人には、セマグルチドとして0.25mgから週一回皮下投与を開始し、その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射しますが、患者様の状態に応じて適宜減量します。いまのところ実施できるのは大学病院などの教育認定施設に限られます。適応があれば、当院長が所属している大学病院や当該施設に御紹介をいたします。

GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド、マンジャロ®)

糖尿病・肥満症の治療薬として非常に効果が高い薬ですが、肥満症のみの保険適応はありません。

手術治療

受診時にBMI≧35の2型糖尿病で糖尿病専門医や肥満症専門医による6か月以上の治療でもBMI≧35が継続する場合は血糖コントロールの如何にかかわらず減量・代謝改善手術が治療選択肢として推奨されています。受診時にBMI≧32の2型糖尿病では6か月以内に5%以上の体重減少が得られないか、得られても、血糖コントロール不良(HbA1c≧8.0)な場合は減量・代謝改善手術を治療選択として検討します。