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腎臓内科 nephrology

腎機能の評価

腎機能はまず血清クレアチニンや尿検査で評価します。

クレアチニン・シスタチンC

クレアチニン(Cr)は骨格筋の代謝産物ですが、腎糸球体から濾過され,ほとんど再吸収されることなく尿中に排泄されます。腎機能が低下すると糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が低下し、Crが上昇します。一般に腎機能を示す指標は血清Cr、年齢、性別から推定されたeGRF(推定糸球体濾過量値)を使用します。

シスタチンC(Cys-C)は、体内の全ての有核細胞で産生され、腎糸球体で濾過され、近位尿細管で再吸収・分解されます。糸球体濾過量(GFR)が低下するとCrと同様にCys-Cは上昇します。Cys-Cはクレアチニンと比べ、筋肉量の影響を受けにくいため、筋肉が多いあるいは筋肉が少ないなど、CrによるGFR推算式では評価が困難な場合に有用です。

蛋白尿

  1. 生理的な蛋白尿:長時間立っているときや運動後、または発熱時などに見られます。
  2. 病的な蛋白尿:筋肉の破壊で起こるとミオグロビン尿や、腎臓の糸球体や尿細管が損傷された場合の糸球体性蛋白尿や尿細管性蛋白尿があります。さらに、尿路系の疾患も蛋白尿を引き起こすことがあります。

運動後、発熱時、起立性などでみられる蛋白尿の可能性を排除するために、別の日に早朝尿を用いて再検査をすることがあります。また尿蛋白が定性検査で陽性であれば尿蛋白の定量を行います。

血尿

  1. 肉眼的血尿:尿が赤~暗赤色であることが確認できる血尿のことを指します。肉眼的血尿の原因として頻度の高い泌尿器の病気には膀胱癌、腎盂尿管癌、腎癌、前立腺癌、尿路結石、急性膀胱炎などで、IgA腎症などの糸球体腎炎によるものもありますが、大部分が泌尿器疾患に由来することが多いです。
  2. 顕微鏡的血尿:一般的な検診などで指摘される尿の潜血反応は尿中の鉄を含む色素に反応するので、尿潜血反応が陽性だけでは血尿とは診断できません。尿沈渣で赤血球増加を認めない場合は、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿の可能性があり、溶血や横紋筋融解をきたす疾患の鑑別が必要となります。尿沈査で赤血球を確認できれば、腎・尿路からの出血があることを意味します。
  • 顕微鏡的血尿は持続性か一過性・断続性血尿かを判断するために繰り返し検査します。
  • 蛋白尿と同様に運動後、発熱時、起立性などでみられる尿潜血の可能性を排除するために、別の日に起床後の早朝尿をとっていただき、再検査をすることがあります。
  • 糸球体性血尿と非糸球体血尿の鑑別に尿中赤血球の形態や、尿沈査による赤血球円柱や顆粒円柱の有無を確認します。
  • 血尿の原因疾患を診断する検査法には、尿沈渣検査・尿細胞診・腹部(腎・膀胱部)超音波検査・採血(生化学、補体、IgG、IgA等)、膀胱鏡・CT・MRIなどが行われます。
  • 顕微鏡的血尿は蛋白尿とは独立した末期腎不全の危険因子ですが、蛋白尿に比較して末期腎不全のリスクは低くなりますが、定期的な経過観察が推奨されています。また蛋白尿単独よりも、血尿を伴った蛋白尿では糸球体腎炎の可能性があり、末期腎不全のリスクが上昇するため、腎生検も検討されます。

腎生検

腎生検の主な目的は、腎臓病の病理診断で腎障害の成り立ち、および病態を把握し、治療方針や予後の推定に活かすことです。腎生検の適応の条件は、以下の通りです。

① 蛋白尿(0.15 g/日以上)を伴う顕微鏡的血尿
② 高度の蛋白尿(1 g/日以上または尿蛋白/クレアチニン比1.0 g/gCre以上)
③ 原因不明や急性の腎機能障害
④ 全身性疾患に伴う腎機能障害(SLE,血管炎症候群,dysproteinemia)

急性腎障害(AKI)

急性腎障害とは、数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する状態です。尿から老廃物を排泄できなくなり、さらに体内の水分量や塩分量など(体液)を調節することができなくなります。

症状としては、乏尿・無尿、むくみ、倦怠感などが認められます。血液検査では、血中尿素窒素、血清クレアチニン、カリウムの高値を認めます。原因としては脱水や出血による腎臓への血流が低下すること(腎前性)、腎臓の炎症や尿細管細胞の障害などにより腎機能が低下すること(腎性)、尿路系の閉塞によるものがあります(腎後性)。

腎機能が低下した原因を早急に突き止めて、対処することが大事です。 心不全・高カリウム血症、代謝性アシドーシス、尿毒症などで、薬物治療に反応しない、あるいは致命的な合併症が生じ得る場合は緊急透析の適応となります。

腎前性の場合は血圧や腎血流の維持、腎後性の場合は泌尿器科的処置が必要です。腎性の場合は腎毒性物質が疑われれば中止し、腎機能回復までに透析が行われることもあります。腎炎の可能性あれば生検やステロイド等を考慮します。

薬剤が原因の場合は、痛み止め(NSAIDs)、高血圧治療薬、造影剤、抗がん剤、抗生物質などでAKIが起こることが多く、投与はじめは異常がなくても、 発熱、脱水、他の薬剤を多く併用しているなどの危険因子がAIK発症を促進するため注意が必要です。

慢性腎臓病(CKD)

CKD の定義は以下の通りで、①,②のいずれか,または両方が 3 カ月を越えて 持続することで診断されます.

① 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか,特に 0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要

② 糸球体濾過量(GFR)<60 mL/分/1.73 m

  • eGFRの値に基づいて、慢性腎臓病の重症度を分類します:
    oG1: 正常または高値 (≧90)
    oG2: 正常または軽度低下 (60~89)
    oG3a: 軽度~中等度低下 (45~59)
    oG3b: 中等度~高度低下 (30~44)
    oG4: 高度低下 (15~29)
    oG5: 末期腎不全(<15)
  • eGFR が 40~69 歳で50 mL/分/1.73 m2未満,70~79 歳で 40 mL/分/1.73m2未満、また蛋白尿およびアルブミン尿が陽性の場合は、高度の腎機能障害まで進行するリスクがあります。
  • 腎機能の低下は心筋梗塞、心不全、心房細動、脳血管障害などの心血管系疾患のリスクを高め、このときに蛋白尿およびアルブミン尿を伴うとさらにリスクが上昇します。レニンアンジテンシン系阻害薬による蛋白尿およびアルブミン尿の減少は,腎機能障害の進行を抑制する可能性が示されています。
  • CKDのステージ進行抑制には原腎疾患の管理が優先され、それに加え、適切な血圧、血糖、脂質異常症、高尿酸血症、体重の管理、貧血の管理、病態に応じたたんぱく質摂取量などの管理が必要です。