2次性高血圧 secondary_hypertension
2次性高血圧とは
高血圧の原因は大きく2つ。ひとつは原因がはっきり特定することができない本態性高血圧です。このタイプは、日本人の全高血圧患者様の8~9割を占めるとされています。
一方、原因を特定できる高血圧を二次性高血圧とよび、重症高血圧、治療抵抗性高血圧、急激な高血圧発症、若年性高血圧の場合に2次性高血圧を疑います。
主な原因は①腎臓、②内分泌性、④心・血管性、⑤脳・中枢神経性、⑥遺伝性、⑦薬剤誘発性などに分類できます。
2次性高血圧を引き起こす主な疾患は次の通りです。
- 原発性アルドステロン症
- 褐色細胞腫
- クッシング症候群
- 末端肥大症
- 甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症
- 原発性副甲状腺機能亢進症
- 肥満
- 睡眠時無呼吸症候群
- 脳幹圧迫
- 大動脈弁閉鎖不全症
- 全身性強皮症
- 遺伝子(家族性アルドステロン症・先天性副腎過形成・Liddle症候群など)
- 薬剤誘発性(甘草・糖質コルチコイド、エストロゲン、シクロスポリンなど)
- 腎血管性高血圧
腎血管性高血圧
腎血管性高血圧とは
腎血管性高血圧は,なんらかの病変が腎動脈に生じて腎動脈が狭窄し、腎血流の低下からレニン産生が亢進 して血圧が高くなる疾患です。腎血管性高血圧の原因の多くは粥状動脈硬化(38%)と線維筋性異型性(FMD)38%、大動脈炎症候群(約15%)が多いです。両側の病変による腎血管性高血圧の症例は高齢者に多いです。
狭窄部位は腎動脈起始部より1/3部分に好発します。冠動脈や下肢の閉塞性動脈硬化症等の臓器の動脈硬化病変を探すことが重要です。また50歳までの女性では腎動脈が数珠状に蛇行しているFMDがみられ、腎動脈本幹の遠位2/3に好発します。大動脈炎症候群は20代の女性に多くみられ、腎動脈起始部に限局してみられます。
腎血管性高血圧を疑うべき症例
①家族歴のない高血圧、②35歳以下、あるいは50歳以降発症の高血圧、③上腹部の血管雑音、④重症あるいは治療抵抗性高血圧、⑤安定していた高血圧の急速な血圧上昇、⑥中年以降の高血圧で原因不明の腎機能悪化、⑦動脈硬化病変(心筋梗塞、脳卒中、下肢の閉塞性動脈硬化症)を有する中等度以上の高血圧、⑧RAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB)投与による急速な降圧、または腎機能の悪化、⑨腎移植後の高血圧、⑩中等度以上の高血圧で肺水腫をくりかえす。
検査
腎動脈超音波検査ドプラ法による腎動脈血流速度測定で腎動脈の狭窄をみます。 造影CT、MRAで腎臓脈が狭窄しているかを見ます。 採血ではレニン・アルドステロンを測定しますが偽陽性・偽陰性が多いとされます。
治療
薬物療法
血行再建をするまでや、血行再建不能時に降圧薬を使用します。片側性腎動脈狭窄にAngiotensin-converting enzyme: ACE阻害薬やアン ジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が有用とされます。
しかし、高度狭窄例などでは、患側の腎虚血 による腎機能低下が生じるため、少量より開始し腎機能を見ながら漸増します。利尿薬はレニンアンジテンシン系の亢進と循環血漿減少による患側腎虚血の 増悪を生じるため禁忌です。両側腎動狭窄や片腎の狭窄例ではACR阻害薬・ARB は原則禁忌です。
血行再建
経皮的腎動脈形成術(PTRA)はFMDに高い治癒率が認められます。再 狭窄例でも再度の施行は可能であります。
動脈硬化による腎動脈狭窄でのPTRAについては、降圧薬単独と、PTRAを併用した場合とでは、腎機能や血圧の差は証明されていないので、 PTRAを考慮しても良い症例(治療抵抗性高血圧(利尿剤を含む3剤使用)、悪性高血 圧、不安定狭心症、FMD、両側の腎動脈狭窄、原因不明の片側腎萎縮、機能してい る単腎の動脈狭窄を伴う場合、進行性慢性腎疾患患者等)について検討します。